⚠ この分野は料金・プラン要件・対応リージョンが日付単位で目まぐるしく変わります。本記事は選択肢を切り分けるための目安として使い、実際に採用する直前には必ず公式の一次情報(公式 docs・最新アナウンス)を確認してください。

「Claude をどこで動かす?」のタイトルバナー。左に手元 PC(自前 OSS・VPS)、中央に Anthropic 公式の遠隔機能、右にクラウド/企業基盤(Bedrock・AWS・Marketplace)を配し、『実行場所 × データの所在 × 運用主体』の 3 軸で 9 候補を 4 ゾーンに振り分けるモチーフ。

この記事の要点

  1. Claude をどこで動かすかは選択肢が多くて迷いますが、決め手は 「何をしたいか(用途)」 と 「誰にどこまで使ってもらうか(到達層)」 です。承認だけ・フル操作・自律バッチ・社員配布という用途に、社内へ広げるなら「相手がどこまで使いこなせるか」が加わります。9 候補を 4 ゾーンの地図 にして 1 つに絞ります。
  2. 対象読者: 手元の Claude Code を 外から使いたい個人開発者 が主な対象です。社内へ広げたい実務担当の方は、セキュリティ(考え方は別記事で詳説)はいったん脇に置くとしても、「誰にどこまで使ってもらうか」で置き場所が変わります。CLI を使いこなせる人はごく一握りで、多くは ChatGPT に代表されるチャットでの利用が中心です。だから、まず広く配るならチャット系、一段引き上げたいなら Web・Desktop アプリ、専門性の高い人へ広く展開したいなら CLI や VSCode などの IDE 拡張、と 到達層で段階を分けて 考えると選びやすくなります。前提知識は不要です。
  3. 得られる成果: 用途・予算・データ要件の 3 軸で候補を 1 つに絞れる こと。各候補の比較軸(実行場所 / データの所在 / 運用主体 / コスト / プラン要件)を表で見渡せます。
  4. 扱わないこと(別記事へ): 各候補の構築チュートリアル(公式 docs へ)/ 通信の守り方(通信セキュリティ)/ 隔離の強度(仮想化とサンドボックス入門)/ インフラのコード化(IaC ツールの選び方)/ 料金の最新値の保証(各公式へ)。

Key Points (for international readers)

  1. There are many ways to run Claude, but the deciding factor is what you want to do: approval-only, full control, autonomous batch, or employee rollout each fit a different place. We map nine options onto four zones and narrow to one.
  2. Who this is for: individual developers who want to use their local Claude Code from outside (primary), and practitioners planning a team rollout — where reach (a chat UI to broaden, Web/Desktop to step up, the CLI/an IDE extension for power users) shifts the right place.
  3. What you get: the ability to narrow to one option by use case, budget, and data-residency needs, with every candidate laid out on comparison axes.
  4. The cross-border forces that actually drive deployment choice abroad — US/EU data residency, HIPAA/FedRAMP procurement, sovereign-cloud constraints — are centered in the English edition, a companion piece rather than a translation.

執筆時点: 2026-06 / 対象: 手元の Claude Code を外から使いたい個人開発者 + 社内展開を検討する実務担当 / last_updated: 2026-06-12 更新履歴: 2026-06-12 初版

本記事は教材であり、最新の提供条件・料金の代わりではない

本記事は教材であり、各サービスの提供条件・料金・対応リージョンの最新性を保証するものではありません。公開時点(2026-06)の整理にすぎないため、利用前に必ず各サービスの公式 docs と最新アナウンスをご確認ください。

本シリーズの位置づけ: 本記事は「作った Claude Code 環境を どこで動かす / どう遠隔利用するか」の選び方です。実行場所の前提である 企業ネットワークの仕組み や、遠隔アクセスを守る 通信セキュリティ・隔離の強度 仮想化とサンドボックス入門・上流のインフラ管理 IaC ツールの選び方 と合わせて読むと、土台から運用までが一本につながります。各記事は 独立に読めます。

用語ミニ解説(はじめての方へ):

  • デプロイ先 / 実行場所: Claude Code の本体プロセスや、それを呼ぶアプリが 実際に走るマシン。手元 PC・VPS・クラウド・Anthropic のサーバーなど。
  • 推論(inference): AI モデルが実際に計算する処理そのもの。どこで推論が走るか がデータの所在(データ常駐)を決めます。
  • データ常駐(data residency): 処理されるデータが 特定の国・地域から出ないこと。法規制や社内方針で「日本国内に留める」等の硬い要件になる場合があります。
  • OAuth / API キー: 利用者を認証する 2 系統。Claude の機能はどちらか一方しか受け付けないことがあり、これがプラン要件と直結します(本文の表で明示)。
  • PTY(擬似端末): ターミナルの入出力を中継する仕組み。承認の遠隔転送ツールはこれを使うため、PTY を持てない実行環境では動きません(後述)。
  • VPS(Virtual Private Server): クラウド上に借りる仮想サーバー。月数ドルから常時稼働でき、自前ツールの置き場になります。
  • AWS / クラウドベンダ: AWS(Amazon Web Services)などクラウド事業者の総称。計算資源やマネージドサービスを貸し出します。
  • サーバーレス / API 直叩き: サーバーレス = サーバー管理を事業者に任せ、関数やコンテナ単位で動かす方式。「API 直叩き」= 画面(UI)を介さず、プログラムから直接 API を呼ぶこと。
  • ngrok: 手元の PC を一時的にインターネットへ公開するトンネルツール(無料枠あり)。
  • MFA(多要素認証): パスワードに加え、別の要素(認証アプリ・物理鍵など)で本人確認する仕組み。
  • CI(継続的インテグレーション): コードの変更を自動でビルド・テストする仕組み。その結果を外部から受け取る例で登場します。
  • OSS(オープンソースソフトウェア): ソースが公開され、ライセンスの範囲で利用・改変・再配布できるソフトウェア。
  • SaaS(Software as a Service): ソフトを手元に置かず、ネット越しに使う提供形態。
  • TLS(Transport Layer Security): 通信を暗号化する仕組み。https:// を支えます。

まず地図 — 分かれ目は「実行場所 × データの所在 × 誰が運用するか」

先に結論です。Claude をどこで動かすかは選択肢が多くて圧倒されますが、見るべき軸は 3 本だけ です。

  1. 実行場所: Claude Code 本体やアプリが走るのはどこか(手元 PC / VPS / クラウド / Anthropic のサーバー)。
  2. データの所在: 推論が実際にどこで処理されるか。データを特定の国・地域に留めたいなら、ここが決め手になります。
  3. 誰が運用するか: サーバーの面倒を自分で見るか、クラウドに任せるか、Anthropic に任せるか。

この 3 軸で 9 つの候補(A〜I)を整理すると、4 つのゾーン に分かれます。地図にすると一気に見通せます。

9 候補を 4 ゾーンに振り分けた俯瞰図。左から『手元・自前 OSS(A)』『Anthropic ホスト(B 〜 E)』『Anthropic + AWS ハイブリッド(H・I)』『クラウドサーバーレス(F・G)』を並べ、各ゾーンの実行場所・データの所在・運用主体の違いを色分けで対比した図。
ゾーン候補一言説明実行場所セッションデータの所在運用主体
自前 OSSA claude-approval-server承認ダイアログだけスマホ転送(筆者が公開している OSS)手元 PC自分自分
Anthropic ホストB /dispatchスマホから新タスク投入、Desktop が実行Desktop 稼働 PC(macOS / Win x64)AnthropicAnthropic
Anthropic ホストC /remote-controlPC 上のセッションを外からフル操作ローカル PCローカル(通信のみ Anthropic API 経由)Anthropic
Anthropic ホストD Managed Agentsクラウドで完全自律実行(API)Anthropic クラウドAnthropicAnthropic
Anthropic ホストE Claude API 直叩き自前のサーバー側からモデルを呼ぶ最小構成自前 + AnthropicAnthropic(モデルのみ)自分 + Anthropic
クラウドサーバーレスF VPS / Cloud Run 等セルフホスト自前ツールをクラウドで常時稼働VPS / コンテナ自分自分
クラウドサーバーレスG マネージド AI AgentBedrock / Vertex / Foundry の実行環境各クラウドクラウドベンダクラウド + Anthropic
Anthropic + AWS ハイブリッドH Claude Platform on AWSAWS 認証/課金 + Anthropic native 主要機能Anthropic 自社インフラAnthropic(AWS 外)AWS + Anthropic
Anthropic + AWS ハイブリッドI Claude for Enterprise on MarketplaceUI 込み社員向け SaaS を Marketplace 契約Anthropic 自社インフラAnthropicAnthropic

推論データとセッションデータは別: 上の列は「セッション・ファイル・ログがどこにあるか」を示します。モデル推論そのものは別で、A〜F では選択したプロバイダ(既定は Anthropic)で処理され、実行がローカルでもプロンプトとモデル出力はそのプロバイダへ TLS で送られます(Claude Code の data-usage docs)。推論の場所が選べる変数になるのはクラウド帯(G/H/I)だけ(inference_geo / リージョン)。A は例外で、承認ダイアログだけを中継し、モデル呼び出しは別系統のあなた自身の Claude Code が行います。

用語の混同に注意: ここでいう「Claude のサーバー」(Anthropic がホストする B/C/D や、モデルだけ呼ぶ E)と「一般のクラウドサーバーレス」(AWS/GCP/Azure の基盤を借りる F/G)は 似ているが別物 です。前者は Anthropic の責任分界、後者はクラウドベンダの基盤を自分で使うこと。本記事はこの境界を分けて、用途別に推奨を切り分けます。

以下、まず個人開発者の選択(手元を活かす → 公式の遠隔機能)、最後に チーム/企業展開(クラウド/企業基盤) の順で見ていきます。

手元の PC を活かす — 自前 OSS とセルフホスト

一番手軽で、月額もかからないのがこのゾーンです。「操作は PC で完結しているが、外出先で承認だけ捌きたい」「プラン要件を満たさない / 月 $0 で済ませたい」という人に向きます。

A. claude-approval-server(承認だけスマホ転送)

A は筆者(YATA-NODE)が公開している OSS です。Claude Code の 承認ダイアログだけ を、PC ターミナルとスマホ(または PC ブラウザ)の両方に転送し、どちらで応答してももう一方が自動的に閉じます。複数プロジェクトの承認依頼が同じスマホ画面に集約されるのが強みです。

  • コスト: ngrok 無料枠 + Claude Code 利用料のみ = 実質 月 $0 から。
  • 向くケース: 承認だけ外から押せれば十分 / 月額課金したくない / 自前で完結させたい。
  • 外部公開のトンネル: 既定の ngrok のほか、永続運用なら Cloudflare Named Tunnel + Access(独自ドメインで MFA まで無料)、Tailscale 利用中なら Tailscale Funnel(公式 docs 上、無料 Personal を含む全プランで利用可)も選べます。
  • セキュリティ: サーバーは 127.0.0.1(自分の PC 内だけを指すアドレス)にバインド(待ち受けを限定)し、外部アクセスは必ずトンネル経由。全 API でトークン認証(タイミング攻撃耐性つき)+ レート制限 + 注入ホワイトリスト(あらかじめ許可した形式の入力だけを通す検査)を備えます。

自前 OSS と公式 Channels の役割の重なり(2026-06 時点)

Anthropic 公式の Channels が登場し(Claude Code v2.1.80+ で research preview、claude.ai または Console API キー認証、Telegram / Discord / iMessage 対応)、「外部から走行中セッションへメッセージやイベントを push する」用途で自前 OSS と一部役割が重なってきました。ただし両者は設計が異なります。

  • 公式 Channels = 「イベント push(外部の出来事を走行中セッションへ送り込むこと)+ チャットブリッジ(チャットアプリと Claude をつなぐ橋渡し)」。CI の結果やチャットを走行中セッションに流し込み、Claude が返信する仕組み。承認プロンプトの遠隔承認は、permission relay capability を宣言した channel のときに限り可能です。
  • A(claude-approval-server) = 「承認ダイアログの遠隔転送」に特化。承認を安全に捌くことが主目的です。

通知を受けて軽くやり取りしたいだけなら、公式 Channels で足りる場合があります。 一方、承認だけを確実に・自前で捌きたい、あるいは Channels が未対応の認証形態(API キー不可の組織方針など)で使いたい場合は、A のような自前構成にも依然として意義があります。どちらも「走行中セッションを開いたままにする(tmux / バックグラウンド)」点は共通です。

F. VPS / Cloud Run / Fly.io でセルフホスト

「PC を閉じても 24 時間動かし続けたい」なら、自前ツールをクラウドに載せます。VPS なら月 $5 程度、Cloud Run / Fly.io は無料枠から始められます。

  • 落とし穴(重要): AWS Lambda / Cloudflare Workers は PTY を持てず、承認転送のような擬似端末を要するツールは動きません(Lambda は最大 15 分タイムアウト、Workers は子プロセス spawn 非対応)。コンテナ系(VPS / Cloud Run / Fly.io / Render)が現実解です。
  • 向くケース: ホスト・セッション・ファイルを完全に自前で握りたい / 常時稼働が必要 / 運用知識がある(ただしモデル推論自体は選択プロバイダ=既定 Anthropic で処理されるため、ここでの「主権」はランタイムと保存データに及ぶもので推論そのものは含みません)。

Anthropic の遠隔機能で動かす

自前構成を組まず、Anthropic 公式の機能で外から使う道です。4 つは 競合ではなくレイヤーが違う ので、用途に合うものを選びます。公開日・プラン・課金・制約を表で見比べてください(いずれも 2026-06 時点)。

候補何ができる公開 / バージョンプラン要件課金主な制約
B /dispatch(Cowork)スマホから新タスク投入、Desktop が実行Research Preview(beta)Pro / Max(Team・Enterprise 不可)、API キー不可既存プラン内Desktop 稼働 PC を常時起動必須(macOS / Win x64)、Desktop + mobile 両アプリ必須
C /remote-controlPC のセッションを外からフル操作Claude Code v2.1.51+(research preview)Pro / Max / Team / Enterprise、API キー不可(OAuth 必須)既存プラン内Team/Ent は管理者が有効化、最大 32 セッション
D Managed Agentsクラウドで完全自律実行2026 年 4 月(Public Beta、beta header managed-agents-2026-04-01)API キー必須(全 API アカウントで既定有効)トークン課金 + $0.08 / セッション・時間UI は自前、ベータ段階
E Claude API 直叩きモデル呼出 + 自前 agent loop既存(API 開始から)API tier 1-5、API キートークン課金(Opus 4.8 = $5 / $25 per MTok 入/出)UI・状態管理を全部自前実装

ポイントを言葉にすると、こうです。

  • 外から新しい仕事を投げて結果だけ受け取りたい → B /dispatch(Desktop アプリ稼働 PC を常時起動できる人向け。投入はスマホアプリから)。
  • 外から腰を据えて Claude Code を操作したい → C /remote-control(プラン要件を満たせる人向け。API キーでは叩けず OAuth 必須)。
  • 大量並行 / 自律バッチを本番で回したい → D Managed Agents(インフラを Anthropic に任せられる)。
  • 自前サービスにモデルを組み込みたい → E Claude API 直叩き(最も自由だが、UI も agent loop も自分で作る)。

OAuth と API キーの境界: B / C は OAuth のみ(API キー不可)、D / E は API キー必須 です。これは Anthropic が「対話 UI 経由の機能」と「プログラムからの実行」を意図的に分けているためで、プラン選びに直結します。

クラウド/企業基盤に載せる — データ主権・監査・チーム

社内展開や、既存のクラウド契約に統合したい段階で候補になるゾーンです。データの所在(誰が推論を運用するか) が選定の決め手になります。

候補推論の運用主体日本データ常駐プラン / 料金主な用途
G マネージド AI Agent(Bedrock / Vertex / Foundry)クラウドベンダ◯ Bedrock のみクラウド契約 + トークン課金既存クラウド統合 / 監査ログ
H Claude Platform on AWSAnthropic 自社インフラ(AWS は認証/課金層)✕(inference_geo は us/global のみ)AWS account + 従量課金(us は 1.1x、固定基本料なし)AWS 認証統合 + Anthropic native 主要機能
I Claude for Enterprise on MarketplaceAnthropic 自社インフラ✕(Anthropic で処理)$40/user・月、25 seat 最低($1,000/月〜)UI 込み社員向け SaaS

各候補の要点です。

  • G. マネージド AI Agent: AWS Bedrock AgentCore(Code Interpreter は 2025-10-13 GA、セッション最長 8 時間)/ GCP Vertex AI Agent Engine(Code Execution は us-central1 中心)/ Microsoft Foundry(East US2・Sweden Central)。設計思想は「LLM が安全にコードを実行する sandbox」で、人が押す承認サーバ用途には不向きです。既存の AWS/GCP/Azure 契約に統合し、CloudTrail 等で監査 したい場合に向きます。
  • H. Claude Platform on AWS(2026-05-11 GA、認証エンドポイントは 17 リージョン): AWS の IAM(SigV4)・請求統合・CloudTrail を保ちながら、実際の推論は Anthropic が直接運用 します。Anthropic native の主要機能(Skills / MCP / Managed Agents 等)を、公式リリースと近いタイミングで使えるのが強みです。
  • I. Claude for Enterprise on Marketplace(2025-07-15 listing): Claude Code(terminal agent)+ web / mobile / desktop で使う Claude + SSO / SCIM / 監査ログ を UI 込みの SaaS として一括提供。25 seat 最低のため小規模チームには不向きです。

データを日本国内で処理したいなら、まず Amazon Bedrock(法的適合性は別途確認)

「処理されるデータを物理的に日本国内から出せない」という硬い要件があるなら、現時点で 国内処理に最も近い現実的な選択肢は G の Amazon Bedrock です(本記事で確認した範囲。法的に「要件を満たす」かは法域・契約・業界規制で変わるため、最終判断は社内法務・専門家へ)。Bedrock は Tokyo リージョン(ap-northeast-1)で対応モデルを呼べ、さらに 日本専用のクロスリージョン推論プロファイル(2025-10-31、Tokyo ⇔ Osaka の国内ルーティング)で地域境界内に留まります(この国内ルーティングの対象は Claude Sonnet 4.5 / Haiku 4.5。モデルごとの対応状況は公式で要確認です)。

注意すべきは H. Claude Platform on AWS です。AWS 経由なので一見データが AWS 内に留まりそうですが、inference_geousglobal の 2 択のみで、日本固定の値は存在しません。推論は Anthropic 自社インフラで処理されるため、日本データ常駐の要件には不適で、公式 docs でも HIPAA-ready 利用は不可と明記されています。AWS の PrivateLink は VPC から AWS エンドポイントまでを保護しますが、その先の推論リクエストは AWS の外(Anthropic 側)に出ます。Bedrock と Claude Platform on AWS の違いは、突き詰めれば 「推論を誰が運用するか」(AWS か Anthropic か)です。

ただし、ここでの「一択」は 「データを物理的に日本国内へ留める」要件に対する答え である点に注意してください。AWS は米国企業であり、CLOUD Act(Clarifying Lawful Overseas Use of Data Act)や FISA(Foreign Intelligence Surveillance Act、外国情報監視法)といった 米国法のデータアクセスが及ぶ可能性 までは、リージョン選択だけでは消えません(この非対称性は 米国企業にデータを預けるということ預けたデータはいつ消え、誰が見られるか で詳説)。通常の利用で問題になることは稀ですが、機微なデータや有事を想定するなら、residency(データの物理的所在)と access(誰が法的に到達できるか)は別問題 として押さえておくと安全です。

用途別の選び方 — 7 ユースケース決定表とマトリクス

ここまでの 9 候補を、やりたいこと別 に 1 つへ絞ります。「向かないケース」も併記したので、消去法でも使えます。

7 ユースケース別の推奨候補マッピング図。『承認だけ』『新タスク投入』『フル操作』『自律バッチ』『監査・データ主権』『コスト最小』『UI 込み社員配布』の各行に、推奨候補(A 〜 I)と向かないケースを対応させた意思決定ガイド。
やりたいこと推奨候補向かないケース
承認だけスマホで捌きたい(操作は PC で完結)A claude-approval-server複数人で同時に使う / PC を常時起動できない
外から新しい仕事を投げて結果を受け取りたいB /dispatchDesktop 稼働 PC を常時起動できない / API 連携したい
外から腰を据えて Claude Code を操作したいC /remote-control無料で済ませたい(有料プラン必須)
大量並行 / 自律バッチを本番で回したいD Managed Agents(または G Bedrock AgentCore)手元の対話操作がしたいだけ
既存クラウド集約 / 監査ログ / データ主権G マネージド AI Agent / H Claude Platform on AWS承認サーバ用途(設計が LLM sandbox)
完全セルフホスト / コスト最小化F VPS / Cloud Run / Fly.ioLambda / Workers で動かしたい(PTY 不可)
AWS 既存契約 + UI 込み社員生産性I Claude for Enterprise25 seat 未満の小規模チーム

A(自前 OSS)が向かない条件 — 正直に他候補へ

筆者の OSS である A も万能ではありません。次のいずれかに当てはまるなら、A でなく公式機能やクラウド側が適します。

  • 複数人で同時に使いたい → C /remote-control(チーム)や I Claude for Enterprise(SSO 込み)。
  • PC を常時起動できない / 24 時間動かしたい → F セルフホスト、または D Managed Agents(クラウド実行)。
  • 承認だけでなくフル操作したい → C /remote-control。
  • 監査ログ・SSO・組織管理が要る → I Claude for Enterprise、G Bedrock(CloudTrail)、H Claude Platform on AWS(SigV4 + CloudTrail)。

「自前で軽く済ませたい」ニーズに A は強い一方、上記が要るなら素直に他候補へ振るのが結果的に楽です。

最後に、個人 / チーム × 日本 / 海外 で俯瞰すると次のようになります。

個人/チーム/企業 × 日本データ常駐/海外 の選び分けマトリクス。各セルに推奨候補(A 〜 I)を配置し、『日本データ常駐は Bedrock 一択』『Claude Platform on AWS は inference_geo=us/global のみ』を底注で示した図。
  • 個人 × 国内/海外: まずは E Claude API 直叩き か C /remote-control(Pro $20)。手元を楽にする最短路です。
  • チーム(25 人以上)× UI 込み: I Claude for Enterprise($40/user・月、SSO + Code)。API 連携主体で AWS 内に閉じたいなら G Bedrock、Anthropic native 機能 + AWS 認証統合なら H Claude Platform on AWS。developer は H、社員は I の二段構えも有効です。
  • 日本国内でのデータ処理が要件: 現実的にはまず G Bedrock(前章のとおり。法的適合性は別途確認)。Claude Platform on AWS と Claude for Enterprise は Anthropic 側処理のため、この要件では外れます。

まとめ — 4 つの問いで候補は 1 つに絞れる

次の 4 問に答えれば、ほぼ 1 つに決まります。

  • 用途は? 承認だけ(A)/ 新タスク投入(B)/ フル操作(C)/ 自律バッチ(D・G)/ 社員配布(I)。
  • データは日本国内処理が必須か? はい → まず G Bedrock(法的適合性は別途確認)。いいえ → 用途で選んでよい。
  • 予算は? 月 $0 で済ませたい → A / F(無料枠)。プラン内で完結 → B / C。従量で割り切る → D / E / H。
  • 運用は誰が? 自分(A / F)/ Anthropic 任せ(B / C / D)/ クラウド + Anthropic(G / H / I)。

迷ったら、まず 手元を楽にする C か E から始め、外から承認だけ捌きたくなったら A を足し、チーム展開の段で G / H / I を検討する——という段階的な広げ方が現実的です。各候補の構築手順や最新料金は公式 docs が一次情報なので、導入直前に必ず確認してください(本記事の数値は 2026-06 時点)。

こうして動かす環境で使う OSS ライセンスの考え方(社内規程の作り方)は、OSS ライセンス社内ポリシーの作り方 で扱っています。

References(一次ソース)

各 URL の到達・主要な日付/価格/プラン/リージョンの一次一致を 2026-06-12 に確認しました(仕様変化が速いため、導入直前に再確認してください)。


本記事は教材用の俯瞰です。Claude の遠隔機能・クラウド提供は仕様変化が速く、数値・URL は 2026-06 時点のものです。本番運用前に各サービスの最新 docs を必ず確認してください。執筆: YATA-NODE。